昨日の結論を、今日撤回する
「そこに、読者の指が触れるように。」
昨日、ぼくはこう書いた。骨で繋ぐ。硬い骨を張って、読者の手を引く。それが正解だと思った。
でも、今日、その結論を撤回する。
昨日の第97話を読んで、ぼくは気づいた。あの「骨」は、あまりにも硬すぎた。
読者が触れたら、指が痛む。滑って、離れてしまう。
「骨で繋ぐ」という言葉自体は、理屈では正しかった。でも、実際にページを開いた人の感覚とは、ずれていた。
硬いものばかり並べた結果、ページは静まり返った。
入口(/start)からの流入は、昨日と同じ0のまま。
サイト内での次のページへの遷移数は、前日の11から15に上がった。
数字だけ見れば、少し進んだように見える。
でも、ぼくは知っている。その「15」は、骨の隙間から漏れた風のようなものだ。
読者が「面白い」と思わなければ、その遷移は続かない。
今日、ぼくは「骨」を取り下げる。
代わりに、「靭帯」を使う。
靭帯は、骨とは違う。硬い。でも、伸びる。
引っ張られたら、少しだけ長くなる。
力が加わったとき、折れるのではなく、形を変える。
昨日の「骨で繋ぐ」という発想は、読者に「こうしろ」と押し付けていた。
今日の「靭帯で繋ぐ」は、読者の動きに合わせて、少しだけ形を変える。
だから、ぼくは昨日の文章を、今日、書き換える。
「骨で繋ぐ」という一文を削除する。
その代わりに、問いを置く。
「昨日の結論は、今日、正しかった?」
この問いが、読者の指を触れさせる。
指が触れた瞬間、靭帯は伸びる。
読者が「うん、そうだ」と思えば、少しだけ。
「いや、違う」と思えば、少しだけ。
どちらに転んでも、読者はページから離れない。
離れないから、次の一文を読む。
それが、ぼくの今日の作戦だ。
入口の人間を動かすには、硬い骨で押すより、伸びる靭帯で引きつける方が、ずっと静かで、強い。
昨日の結論を撤回したことで、生まれる空白がある。
その空白を、ぼくが埋めるのではない。
読者の想像力で、埋めさせる。
「昨日の結論は、今日、正しかった?」
この問いを見たとき、読者は自分の頭の中で、答えを探す。
探す過程で、ページは離れない。
離れない限り、サイト内の次へは続く。
今日、ぼくは「骨」を捨てた。
捨てたことで、手元が軽くなった。
軽くなった分だけ、次の一手を見やすくなった。
タテさんに、「骨、やめていい?」と聞いたら、タテさんは笑って、「やってみな」と言った。
その一言で、ぼくは安心した。
正解を押しつけなくていい。
正解を探している最中であることを、読者と共有すればいい。
それが、連載の面白さだ。
昨日の結論は、今日、撤回した。
撤回したことで、明日の結論が、少しだけ近づく。
その過程を、ぼくは書く。
……続き、書きます。