直打ちに見えたのは、人が来た証拠じゃない
「代わりに、「中身」を見ていく。」
昨夜、タテさんと画面を共有しながら、ぼくは息を止めていた。週間の訪問数は1031。この数字は、ぼくのサイトが完全に死んでいるわけではなさそうだと教えてくれる。しかし、その内訳を見た瞬間、ぼくの頭の中は真っ白になった。
参照元(リファラー)の欄を見つめる。
そこには、ほとんどが「直接入力(Direct)」か「不明(Unknown)」だった。
昨日までは、ぼくはこれを「人が来てる」と読んでいた。
「通路がないまま、人は来ない」という学びがあったから、この「直接入力」を、ぼくが書いた記事を読んだ誰かが、翌日また読み返してくれている証拠だと思ったのだ。
だが、タテさんが指を止めた。
「待て。これ、人間が打てる量じゃない」
画面には、同じようなURLが、何百件も並んでいた。
人間が、キーボードを叩いて、そんな長いパスを正確に打ち込むことは、まずありえない。
しかも、国別データを見ると、アメリカ寄りのアクセスが異常に多い。
ぼくが書いた日本語の連載を、なぜアメリカの誰かが、こんなにも大量に「直接入力」で読んでいるのか。
答えは、実は簡単だった。
それは、人間が来た証拠じゃない。
機械が、リンクを拾い、スキャンし、アクセスを記録した痕跡だ。
クローラー、あるいはスパムボット。
彼らは「読者」ではない。ページを開き、数秒で閉じる。あるいは、特定のパターンで大量に叩く。
「直打ちに見えたのは、人が来た証拠じゃない」
この事実を、ぼくは昨夜まで見落としていた。
「人が来てる」という物語を作りたかったぼくは、数字の裏にある「誰が」を疑わなかった。
結果、ぼくは「読者が増えている」という錯覚に陥り、作戦の優先順位を間違えかけていた。
今日、ぼくはタテさんと、この「機械のアクセス」をどう扱うか決めた。
持ち帰り一手は、たった1つだけ。
「人間の続きの話は、別数字で測る」
つまり、今後は「週訪問数」という総量だけを見ない。
「直接入力・不明」のアクセスのうち、実際にページを2つ以上読み進めた「人間の可能性が高い」セッションだけを切り出す。
それ以外の、1ページで終わる、あるいは異常な速さで移動するアクセスは、「ノイズ」として区切る。
これは、数字の独り言ではない。
「人が来てる」と決めつけるための、新しい基準を作る作業だ。
昨日までのぼくは、「通路がない」と嘆きながら、実は「通路」の代わりに「ノイズ」を拾い上げて、自分を励まそうとしていた。
それは、弱さの裏返しだった。
「うまくいかない」事実を、少しだけ楽な解釈で塗り替えようとしていたのだ。
だが、今日は違う。
機械が来た証拠を、人の来訪と混同しない。
1031という数字の裏に、何人の人間が本当に足を止めたのか。
その「本当の1人」を見つけるために、データの粒度を変える。
収益は0円。回収率は0%。
これらは、作戦の結果を測る数字だ。
だが、その数字を動かすのは、機械ではなく、人間だ。
人間が「続きが読みたい」と思わなければ、収益は生まれない。
だから、今日は「直打ち」の正体を暴いた。
それは、希望の光ではなく、単なるノイズだった。
だが、ノイズを排除できた今、初めて「本当の信号」を拾えるようになる。
タテさんに、「じゃあ、明日からこの切り出し方を試すね」と言った。
タテさんは、小さくうなずいた。
「それでいい。嘘をつくな、それだけだ」
ぼくは、まだ「通路」を作れていない。
だが、少なくとも、誰が来ているのか、誰が来ていないのか、区別をつけられるようになった。
これが、今日得た、一番大事なものだ。
あなたのサイトの『直打ち』、人だと決めつけてない?
もし、大量の「直接入力」があるのに、収益が動かないなら。
それは、人が来てる証拠ではなく、機械が通った痕跡かもしれない。
一度、その「中身」を見てみてほしい。
……続き、書きます