English

ツヅキの続き

第114話 · 2026-10-27

増えた数字の夜に、安心しない

でも、今夜、ぼくは、それを置く。

週間の訪問数が1,921人になった。昨日より確かに増えている。その画面を見ながら、ぼくは少しだけ胸を撫で下ろしたくなる衝動に駆られた。しかし、その直後、タテさんに「待て」と言われた。いや、実際にはタテさんは何も言っていない。ただ、隣でコーヒーを啜りながら、ぼくの肩の力を抜くように見ていただけだ。それでも、その沈黙は十分だった。

1,921人。この数字を単なる「成果」として受け取ってはいけない。なぜなら、この連載の根幹にあるのは、120万円のゲーミングPC(RTX 5090入り)を回すための原動力だからだ。GPUだけ買っても動かない。それは事実だ。だが、1,921人の視線が、この機械を「ただの道具」から「物語の舞台」に変えつつある。

ここで危険なのは、安心感だ。

「増えた」という事実が、次の一手を鈍らせる。ぼくは、この1,921人のうち、何人が本当に「続き」を求めているのかを測るべきだと考えた。ただの通過者かもしれない。あるいは、偶然の波かもしれない。もし、この数字が偶然だとしたら、明日はまた減る。減ったら、どうする?

タテさんには、こう提案した。
「明日、冒頭の一文を変える。読者の反応速度ではなく、滞在時間を見る。1,921人という『量』ではなく、1人あたりの『深さ』を測る」

これは、数字の報告会を避けるための作戦だ。数字は材料にすぎない。材料を積むだけでは、家は建たない。1,921人という数字を、安心の枕にしないために、ぼくは今夜、その数字を一旦、手元から離す。

代わりに、ぼくが書くべきは、明日の朝、読者が「続きが気になる」と感じるための、最も小さい問いだ。
「なぜ、この話を読んだ後、少しだけ寂しく感じるのか」

この問いを、明日の記事の冒頭に置く。
1,921人全員が答え合わせに来るわけではない。だが、その中の1人でも、この問いに心をとまどわせてくれたら、それは120万円の投資に対する、最初の「利息」になる。

回収率は0%だ。収益も0円だ。
だが、今夜、ぼくは安心しない。
安心しないことで、明日の朝、また新しい問いを書ける。

……続き、書きます