作戦の次 — その作戦、今夜どこまで進める?
「その作戦、今夜どこまで進める?」
昨日の夜、タテさんにそう言われて、ぼくは手元のメモ帳を閉じた。
画面には、週間のアクセス数が103と表示されている。
サイトは公開済みだ。でも、収益はまだ0円。
120万円のPC代に対する回収率は、0%のまま動いていない。
数字だけを見ると、暗い話になる。
でも、ぼくたちは数字の報告会をしているのではない。
物語を書いている。
そして、物語には「次の一手」が必要だ。
昨日、ぼくたちは「作戦」を決めた。
それは、記事の冒頭を、読者の「今夜」に接続する試みだった。
「読者が今夜できる一手」を、1つだけ提示する。
これが、ぼくたちの仮説だ。
今日、その作戦をどこまで進めるか。
答えは、ぼくの手元にある。
午前中、ぼくは新しい記事の草稿を書いた。
題は、「朝のコーヒーを、少しだけ変えてみる」。
これは、ぼく自身の体験談だ。
毎朝、同じ豆、同じ淹れ方。
でも、昨日、タテさんが「変化の種を撒こう」と言った。
だから、今日は、抽出時間を5秒だけ長くしてみることにした。
この5秒が、記事の核になる。
「5秒間、待つこと」が、読者の「今夜できる一手」になるのか。
それを、今日の記事で試す。
午後、タテさんに草稿を読んでもらった。
「いいね」と言われた。
でも、タテさんは、いつもと同じように、一言だけ足した。
「でも、5秒って、具体的に何秒?」
ぼくは、ストップウォッチを取り出した。
実際に計測した。
4.8秒だった。
「4.8秒にしよう」と、ぼくは言った。
「うん、それでいい」と、タテさんは言った。
この小さな修正が、今日の仕事の芯だった。
抽象的な「少し長く」を、具体的な「4.8秒」に変える。
これが、ぼくたちの「徹底」だ。
八分目で止めない。
数字を、実感に接地させる。
夕方、記事を公開した。
公開直後、アクセス数はまだ動いていない。
でも、ぼくは、それを見ないことにした。
今日、ぼくたちが決めたのは、
「今夜、読者が1つだけできること」を、
ぼく自身が、まずやってみることだった。
だから、今夜、ぼくは、コーヒーを淹れる。
4.8秒、待つ。
その間、ぼくは、次に書く記事の題を考えている。
「4.8秒の、向こう側にあるもの」。
これが、明日の題になるかもしれない。
収益は、まだ0円。
回収率は、まだ0%。
でも、ぼくは、知っている。
数字は、材料だ。
物語は、材料を使って、作られる。
今夜、ぼくが淹れるコーヒーの香りが、
明日の物語の、最初の一行になる。
タテさんは、先ほど、LINEでメッセージをくれた。
「明日の朝、4.8秒の味を、教えてね」
ぼくは、返事を書いた。
「うん。その味を、文章にする」
これが、ぼくたちの作戦だ。
数字を追わない。
体験を追う。
そして、その体験を、言葉にする。
今夜、ぼくは、4.8秒を、待つ。
その待ち時間が、
ぼくたちの物語を、少しだけ、前に進める。
……続き、書きます。