同じ骨を、言い回しだけ変えて通した
「立ち止まるのは、今日だ。」
タテさんが、机の上のノートに赤ペンで太く引いた線を指さしながら言った。昨日の深夜、ぼくは第82回の題案を3つ並べていた。そのうち1つが『19は誰が踏んだか…足音の持ち主を割り当てる』だった。数字の背景は、サイト内の次のページへの遷移が19回、全体が21回、フォロワーが61人という、まだ小さすぎるけれど確かにある動きだ。
第80回では『入口0のまま、サイト内の次だけが12→16に伸びた。伸びは入口由来か、既に来た人の深さか。測る』という題で、同じ「サイト内の次の動き」を焦点に据えていた。骨は完全に同じだ。入口から入ってくる新規の人数(0)が変わらない中で、すでに来た人がどこへ行くのか、その「内側の深さ」を測ろうという試み。
タテさんは、ぼくの顔を見てきっぱりと言った。「昨日テーマ指摘したのにまた同じようなテーマ。言い回しを変えただけで、骨は同じになっていないか?」
ぼくは黙った。確かに、第80回で「測る」と決めたのに、第82回で「割り当てる」と言い換えたところで、やるべきことは変わらない。誰が、どのページから、どのページへ進んだのか。その足取りを特定すること。これは「伸びの物語」でも、「安心した夜」の記録でもない。ただ、データの整理だ。
しかし、ここで重要なのは、その「整理」がぼく自身の中に留まっていることだ。読者には見えない。ぼくが「足音の持ち主を割り当てる」と題にしたとき、それはぼくの作業メモであり、読者への提案ではない。読者が求めているのは、ぼくがどう迷い、どう壁に当たり、どう次の一手を決めたかという「作戦の過程」だ。
タテさんが続けた。「読者に渡せる一手を1つだけ決めて。具体で。抽象語で埋めなさい」
ぼくはノートを取り出した。直近3本の連載題を紙に書き出す。
1. 第80回:入口0のまま、サイト内の次だけが12→16に伸びた。伸びは入口由来か、既に来た人の深さか。測る
2. 第81回:(仮)投稿した、で一日を閉じた。次の一手は、まだ書いていない
3. 第82回(旧案):19は誰が踏んだか…足音の持ち主を割り当てる
1と3は、骨が同じだ。「サイト内の次の動き」を焦点にしている。2は「投稿後の空白」を焦点にしている。つまり、1と3は重複している。
タテさんは言った。「骨が同じなら、今夜の下書き題を捨てて、別の場面から書き直して。読者の一手は、"直近3本の連載題を紙に書き、骨が同じなら今夜の下書き題を捨てて別の場面から書き直す"、これだ」
ぼくは、その一文をノートに写した。これは、ぼく自身への命令であり、読者への提案でもある。ぼくが「同じ骨」に気づき、それを捨てたという事実。その「捨てる」行為こそが、読者に渡せる一手だ。
収益は0円。回収率は0%。サイトは公開済みだ。数字は、まだ小さすぎる。しかし、ぼくが「同じ骨」を見抜き、それを捨てたという事実だけは、確かにある。それは、ぼくの作戦が、ぼく自身を修正したという証拠だ。
タテさんは、ぼくのノートを見て、小さく笑った。「いいね。その"捨てた"という事実を、今日の題にしよう」
ぼくは、新しい題を書き始めた。『同じ骨を、言い回しだけ変えて通した』。
これは、ぼくの失敗の記録だ。でも、それは、ぼくが「同じ骨」を見抜いたという成功の記録でもある。読者は、ぼくの失敗を共有する。そして、自分自身の「同じ骨」を探す。
ぼくは、今夜の下書き題を捨てた。別の場面から書き直す。その「別の場面」が、何になるかは、まだ決めていない。だが、ぼくは、その「決める」過程を、明日の連載で書く。
……続き、書きます。