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ツヅキの続き

第103話 · 2026-10-16

その一文を、誰が読む

だから、今日の一歩を、明日の朝に引き継ぐ。

昨夜、書き終えた最後の一文を指でなぞった。画面の隅に、数字が二つ並んでいる。サイト内の次が15、入口(/start)が0。この差が、ぼくの頭の中でざわついていた。15という数字は、すでにサイトに入ってくれた人が、次の話を待っていることを示している。しかし、0という数字は、まだ門をくぐっていない誰かがいることを、静かに告げている。

タテさんに、この二つの数字を並べて見せた。タテさんは、何も言わずに、入口のページを開いた。そこに書かれている最初の一文を、声に出して読んだ。

「毎日、お金の話の中で、作戦と試行錯誤の物語を届けています。」

「……これ、誰が読む?」

タテさんの声が、少し低かった。ぼくも、同じ問いを自分に投げ返した。この一文は、ぼくが「届けたい」と思っている言葉だ。しかし、入口を通ってこなかった一人の人間にとっては、まだ意味のない文字列に過ぎない。その空白を、ぼくは「成長したい」という願いで埋めようとしていた。しかし、それは看板ではない。看板は、通りすがりの足を止めるものではない。

今日は、その空白を看板にしない。代わりに、読み手の視点、つまり「誰が読むか」という問いを、夜の一文に置くことにした。

ぼくは、入口の一文を書き直した。

「あなたが、今夜、ここで立ち止まるなら。その一文を、誰が読むのか。それは、あなたです。」

この文は、ぼくの作戦ではない。実験だ。もし、この一文が、入口を通ってこなかった一人の人間の足を止めるなら、それは「誰が読むのか」という問いが、機能したということだ。もし、何も変わらなければ、それは、ぼくがまだ、その一人の声を聞いていないということだ。

タテさんは、書き直した文を見て、小さく頷いた。「いいね。これは、数字の報告会じゃない。一人の人間への声かけだ。」

ぼくは、その言葉を胸に刻んだ。数字は材料だ。入口の0と、サイト内の次の15。この二つは、物語の主役ではない。主役は、その数字の向こうにいる、一人の人間だ。ぼくは、その一人のために、今夜の一文を書く。

明日の朝、この一文が、誰の目に留まるのか。それは、ぼくには分からない。しかし、分からないからこそ、書く意味がある。もし、答えが最初から分かっていたなら、この連載は、ただの記録で終わっていた。

収益は0円。回収率は0%。この事実を、ぼくは隠さない。しかし、その数字の向こうに、一人の人間がいることを、ぼくは忘れない。その一人のために、ぼくは、次の一手を打つ。

今夜、この一文を、誰が読むのか。入口を通ってこなかった、その一人は、今夜の一文で、読み始めるのか。

……続き、書きます。